明治から実業団へ羽ばたく選手たち Page5:富田 峻平

 

 毎年数人の選手が競技継続のため実業団へ進む明治大学競走部。社会人でも目覚ましい活躍を見せる選手が多いなか、今年は6人もの選手が実業団行きを決めた。そんな彼らの4年間の振り返り、競技継続への思いなどを聞いてみた。(この取材は1月下旬に行われたものです)

 

――改めてどちらの実業団へ進まれるのかを教えてください。

 「日立物流、4月よりロジスティードという社名になりますがそちらで競技を続けます」

 

――入学時と今で、自分の中で変わったと思うところを教えてください。

 「入学時、櫛田(櫛田佳希:政経4)、小澤(小澤大輝:政経4)、加藤(加藤大誠:経営4)、杉本(杉本龍陽:政経4)あたりは全国大会で知り合っていたらしくて、正直自分はそんな人たちと交流が無くて持ちタイムもかなり低いほうでした。ちょっと出遅れたなというのを感じながらスタートしました。入学当初の皆の話題であったのが、広島であった都道府県駅伝で、千葉県の代表にすらなっていないので話に入ることができなかったんです(笑)。それを考えると当時と比べてホントに競技力では成長できましたし、皆とも仲良くなれたので、そういったところが大きく変わったかなと思っています」

 

――4年間のなかで苦しんだタイミングがあれば教えてください。

 「きつかったタイミングでいうと、僕は1年生の時の夏合宿では最初、一番下のチームから始めました。そこから北海道に行く選抜合宿は1年生の多くが行くなかで、自分は青森のほうで別チームで練習していました。さらに菅平でやる選抜合宿の時期も、別チームで館山にいて中学生と一緒に走るみたいなことをやっていたんです。皆がすごい練習をしているなか、悔しい思いをしました。そこから運よく全日本大学駅伝に出場できたんですけど思うように走れなくて、さらに悔しい思いをしました。2年生になってそれなりにうまくいくようにはなったんですけど、箱根駅伝でもシード権をあと一歩のところで逃してしまったので…」

 

――4年間で一番学びになったことを教えてください。

 「一番は大学3年生の時の箱根駅伝ですね。区間上位になる走りをすることができて、他大の箱根駅伝に出るような選手たちとも戦っていかないといけないという感じになってきました。結果を出したからこそ次はそれ以上を求められるようになったというか、ある意味責任のある立場になったのかなと。そこから聖人さん(鈴木聖人選手:旭化成)たちが卒業して抜けることになって、自分たちの代が頑張っていかないといけないんだなと思った時には『責任重大だな』という感じがしました。そこからの1年間は絶対垂れることはできないという気持ちで毎レース臨んでいました」

(入学当初の富田)

――ラスト1年はプレッシャーと「やりきるぞ」みたいなポジティブな気持ちだったらどっちのほうが上でしたか?

 「正直プレッシャーのほうが上でした。期待される以上は結果を出さないといけなくて、それこそ前回の全日本大学駅伝の時は7区を任されましたけど、とんでもない人達と同じ土俵に立たされたので…。そういう人たちと勝負していかないといけないのはすごくプレッシャーでしたし、勝負したら勝たないといけないというのもかなりプレッシャーとしてかかりました。今回の箱根駅伝もスタートラインに立った時は相当怖かったですし、ラストスパートなんかも…、本当に怖かったですね。あの飛び出した時も、あんなペースで最後まで走りきれるわけないので、全員に対してブラフというか『ぶっちぎってやる』という思いでやっていました。その分後半苦しくなることは自分でも分かっていたので、区間下位にでもなったらどうしようかと……。飛び出したというよりは逃げるみたいな感じでしたね。前を追ってはいましたけど後ろからも全力で逃げていました(笑)」

 

――結果を求められるというところで、日頃の練習はどうこなしていましたか?

 「高校の時と比べて、一つ一つの練習もレベルが高くなっていて全然違いますし、練習なんかで垂れていたら次のレースで使ってもらえなくなるかもしれないという緊張感がありました。ある意味いい緊張感のなかで練習できていたと思います。それのおかげで強くなれたのも間違いないんですけど、怪我なんかしたらどうしようもないですし、最後の1年間は1戦も逃してはいけないという気持ちで、怪我には特に気をつけていました」

 

――今年度は出場レースも少なかったですもんね。

 「そうですね。特に関東インカレは2種目出ることになって、2種目出場するということは2人分の活躍を求められるので、そこはだいぶ緊張しましたし、ホクレンディスタンスの時も行かせてもらえて嬉しかった半面、そこまで行った以上記録更新などの高いレベルを求められるので。いい緊張感を味わえたとは思っています」

 

――プレッシャーばかりの4年間でしたが、自分自身としてはそういう緊張に強いタイプだと思っていますか?

 「いや、正直絶対に強くないですね(笑)。強くない方でしたけど4年生という立場は強くならざるをえない立場なので、怪我をしないことは特に考えていました」

 

――もし仮に1年生の時に戻れるならどんなアドバイスをしますか?

 「もっと外出しておけば良かったなと(笑)。今けっこう世間知らずみたいな状態になっているので、社会経験をもう少し積んでおけば良かったなと思っています。練習とかで余裕がなくて疲れていただけだと思いますけど(笑)」

 

――今回6人が実業団入りということで、ライバル意識などはありますか。

 「ありますね。他の選手に負けるのも悔しいですけどそれ以上に大学の同期に負けるのは悔しいので。今は自分が持ちタイム的には一番ですけど、それを抜かされたらけっこう悔しいんじゃないかと。直接対決以外にもそういったタイム的なものはこれからもずっと意識していくと思います」

 

――そんな同期たちの存在を振り返っていかがでしょうか。

 「変な人たちばかりで正直4年間では足りなかったですね、全てを知るのには(笑)。でもいい人たちばかりで、キツイことも皆で『キツイ』と言える仲でしたし、嫌な練習も『嫌だなぁ』と言い合える関係でしたし、過ごしやすい同期でした」

 

――実業団を目指し始めたのはいつ頃からですか?

 「2年生の終わりくらいですね。5000mと1万でタイムが出てから目指せそうだと思って決めたので。タイムが出てからやっと自分のなかでは挑戦権を得られたなという感じでした」

(1年生時の全日本大学駅伝)

――実業団での目標を教えてください。

 「1年目からトラックのほうにもしっかり出て、まず何よりも日本選手権の標準タイムを切ることからですね。それでも標準を切って出場するだけではダメなので、そこから勝負をしにいけるレベルにまで競技力を上げないといけないなと。駅伝に関しては今の段階だと代表選手にもなれるか分からないですし、もちろん出場することもできないと思うので、まずは代表として走れるところにまでもっていかないといけないなと。千葉の代表にもなりたいですけど富士通とかもいるので(笑)」

 

――もうすぐ卒業ですが、明治で良かったところを教えてください。

 「人も良かったですし、トラックがすごい近かったりして施設面的にはすごく良かったです。あとは明スポが凄すぎる(笑)。ホクレンディスタンスまで来たのはちょっと引きました(笑)。延岡のゴールデンゲームスにもいましたし、ちょっとヤバい集団だなと思っていました(笑)。北海道の時は幽霊見たと思いましたもん。霧とかもすごかったので…。でも、そういうかたちで応援してくれる体制があるのはすごくありがたい限りです。佑樹さん(山本佑樹駅伝監督)も北海道に関しては少し引いてたかと……(笑)。ホントに感謝しています」

 

――今いる後輩たちは富田選手から見てどう映りますか。

 「後輩たちにはどんどんチャレンジしてほしいなと。良くも悪くも自分たちが引っ張っていく中で、参加資格権で枠を取ってしまったので、僕たちが抜ける分森下(森下翔太:政経1)、とかにはどんどんレベルアップしてほしいですし、16人のメンバーに入ったけど走れていない新谷(新谷紘ノ介:政経2)とか室田(室田安寿:情コミ1)とかにも第一線で活躍してほしいです。そのためにも出られる大会には全部出て臆せずチャレンジしてほしいなと思っています。今度は杉(杉彩文海:文3)が復路で区間賞を取った以上往路でも求められてくるので、杉は責任ある立場にもなるわけなのでここから頑張ってほしいですね」

 

――後輩たち(これから入学してくる人も含めて)へ残したいメッセージがあればお願いします。

 「自分たちの代はシード権を残すということができなかったので、そこに対しては申し訳なく思っています。今度は明治のOBとしてOB会費などで支援をしていきますし、そういう面から応援するので頑張ってほしいなと(笑)。走りではもう引っ張ることはできませんが、陰ながら支援しています」

 

――これからも応援してくださるファンの方へ一言お願いします!

 「応援はすごく力になっていまして、僕は応援無しにはここまで頑張ってこられなかったのでそこにまずお礼を言わせてください。ありがとうございます。皆さんに応援されるような、期待される選手になりますので引き続き応援してくれると嬉しいです」

【聞き手、書き手:金内 英大】

(写真提供:明大スポーツ新聞部)

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